テーマ 薬学・バイオ 有機農業
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どんな分野?
国民の生きる糧となる「食料」の生産という重要な役割をもつ日本の農業。しかし、天候や土壌、害虫など自然環境からの影響を受けやすい業種であり、生産量や品質を安定させることが難しかった。
近年はバイオ技術の進展により、農業の世界にも新しい潮流がいくつも生まれている。
たとえば農産物の品種を改良する現場では「美味しい」「冷害に強い」「収穫量やサイズが大きい」といった優れた品質の農産物を何世代も交配して、結果を実験的に検証する必要があった。バイオテクノロジーを応用した遺伝子組み換えの技術は、より効率的に新品種の生産を可能にしている。また、交配の結果を高い確率で予測できるシミュレーションなど、研究手法の進歩も著しい。
活躍の舞台
農業のあらゆる技術を科学的に研究する分野が「農学」だ。大学では「生物学」や「化学」の基礎知識を幅広く学んだうえで、農業(稲作・畑作)や畜産の専門分野に進む。
このうち(狭義の)農学系の学問では、生産の対象となる植物(野菜・樹木)の性質を理解したうえで、育種から植え付け、栽培、収穫という工程に沿い、実践的な農業技術を学べる。
有機・減農薬農法などに関連が深いのが「農芸化学」。実験を中心とした化学的な研究手法で、肥料や農薬、農産物の加工・保存などについて学んでいく。
そのほか、農地の計画や土壌づくりなど「土木工学」に関する領域、農業工場で用いる生産機械、農業車両についての工学知識を専門に学べる「農業工学」というジャンルもある。
学問へのアプローチ
農業栽培の高度な技術を学んだ人の進路としては、各都道府県の「農業試験場」、農家を指導する「農業普及指導センター」、そのほか各地の農業団体、農業機械や農薬肥料のメーカーなどがある。
バイオテクノロジーの進展は、農業の現場に大きな変革をもたらしつつある。大幅な増産という「量」の側面、味の良さ、安全性の高さといった「品質」の側面のほか、天候(降水量・気温など)などの自然環境に左右されないという「生産技術」の側面でも、大きく貢献している。たとえば太陽光の代わりに人工光線を用い、温度や水やりをコンピュータで制御して屋内環境で計画的に農作物を生産する「植物工場」などの新機軸の農業も広がっており、さらなる発展が期待される。