テーマ 薬学・バイオ 植物工場
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どんな分野?
植物工場とは、屋内に人工的な生育環境を整備し、年間を通して安定的な収穫量を確保すること、そして農作物の品質や安全性を高めることをめざす農業システムを指す。
土を使わず養分を含んだ液肥を植物に与える「養液栽培」が中心で、コンピュータを用いた自動化により、土壌や温度・湿度・日照といった気候条件を常時コントロールする。年間計画に基づいて生産を調整できるため、市場動向を見ながら商品の少ない時期を選んで出荷できるメリットがある。
高度なバイオ技術によって高い収穫量と品質を実現しており、太陽に代わる人工光源、二酸化炭素を調節できる空調システムといった技術の進歩も著しく、自然環境に左右されやすい従来の農業の弱点を克服することが期待されている。
活躍の舞台
植物工場について専門的に学ぶには、「農学」系の学科に進学するのがオーソドックスな進路だ。
「農学」は、さまざまな専門領域に分かれており、たとえば狭義の「農学」では、農業の生産技術について総合的に学べる。また「農芸化学」では、肥料や農薬などの化学的知識を土台に、農産物の品質と収穫量を上げるための技術を研究する。さらに、植物工場の生産システムや機械技術について学ぶ「農業工学」もある。
最近では、農学部に植物工場の実験施設を設置して、本格的に栽培実験の取り組みをスタートさせる大学も現れており、工場における栽培管理と計画生産の仕組み、環境制御の方法などの現場技術を実地に即して学ぶことができる。
学問へのアプローチ
商社や機械メーカーなど、異業種から植物工場での生産に参入する企業が増加しており、バイオやAI・ロボットなど最新科学を生かした先端農業の専門知識を備え、新しい農業を開拓していく有能な人材へのニーズは高まっている。
食糧不足や貧困問題を解決するには、食糧の安定的な供給が不可欠の条件だ。また、温暖化による気候変動や異常気象の深刻化も予測されており、自然環境に関係なく食糧を生産できる植物工場には大きな将来性がある。
人工光源だけでなく、太陽光を利用した生産システムも研究されており、最新の工学技術と伝統的に培ってきた農法の技術、自然の力を巧みに組み合わせることで、従来にない持続可能な農業生産システムを構築することが課題となる。