テーマ 食物と栄養 食品ロス
その他のキーワード
どんな分野?
日本では、食品由来の廃棄物が年間2,842万トン出されており、うち約23%が食べ残しなどの「食品ロス」です(2015年度推計)。食糧の大半を海外からの輸入に頼っていますが、一方で食べられる食糧を大量に捨てているという現実があるのです。こうしたロスの背景には、食物流通の問題が関わっているといわれています。少しの傷や形の悪い農作物は「規格外」として廃棄されます。また、一部の小売業では、食品の安全管理のため一定の販売期限を過ぎた商品を廃棄しています。
食品リサイクル法に基づき、飼料・肥料などへの再生利用や発電・温熱としての利用など、食品ロスを減らす動きが始まっています。消費者の側にも必要以上に買わない、食べ残しを出さないといった心がけが求められます。
活躍の舞台
このテーマを大学で学んだ人は、食品関連のさまざまな業種に活躍の道があります。たとえば、食品工業に就職して、商品開発や企画の部門で、食材を有効に利用する調理法や加工法を研究する、あるいは広報・宣伝の部門で余った食材で作るレシピを消費者に提案するといった仕事が考えられます。食品流通業では、食品卸売業のほか、廃棄された食物を再処理する食品リサイクル業が挙げられます。さらに調理師や栄養士、料理研究家など、食品を扱うプロの仕事もあります。
食品ロスの問題は、食べるのが好きな人、食へのこだわりが強い人にとっては、やりがいのあるテーマです。食品生産や流通の業界に入り、食品を無駄にしない社会づくりに貢献してみてはどうでしょうか。
学問へのアプローチ
「社会学」では、現代の先進国に共通の現象である食品ロスというテーマを、食品の流通制度の問題、日本人の食生活や食習慣など、多角的な視点から研究します。「家政学」では、家庭や生活の視点からアプローチします。食品ロスが生じる原因を、核家族化や個食化、まとめ買いして貯蔵する消費行動などと関連づけて考え、食に関わる家族の課題を浮き彫りにします。「食物学」では、様々な食品の科学知識を元に、おいしく、無駄のでない調理法や加工法、衛生的で安全な保存法を実践的に学びます。農業生産・流通のシステム、農産物の輸入など、食品をめぐる市場経済を研究する「農業経済学」もあります。食糧自給や食の安全保障という大局的な観点で、食品ロスの問題を考えます。
このキーワードについて学べる学問分野
社会学
家庭・地域・学校・企業など人間が作っている「組織」のしくみやはたらきを検証し、そこに生起する種々の現象を解析。社会病魔、福祉、環境、メディアといった現代的課題に迫る
農業経済学
農作物の生産、流通、消費の過程を主に学習し、食糧の安定供給と安全性の確保のための方策を研究する分野。世界の食糧流通を検証し、食糧危機の解決や途上国の開発援助にも取り組む
食物学
日常生活の中での食べ物の調理や食生活の問題を総合的に研究する学問。家庭の視点から食べ物の調理と加工の技術を学び、《おいしさ》と《栄養》を追究。豊かな《食文化》を提案する
家政学
衣食住や育児など、家庭生活に関わるさまざまな知識や技術を科学的に研究する分野。伝統的な“生活の知恵”を科学的に検証する一方、家庭に密着した地域社会のあり方も研究テーマに